ハイデガー哲学を「西洋哲学の批判的継承」として捉えることが研究目的である。 1.「ハイデガーとナチズム」問題を、プラトン『国家』とニーチェの「神と死」とが形作る西洋形而上学の内に位置づけ、「「詩人-思惟者-国家創造者」の三位一体」を書いた。ハイデガーのナチズム参加を、彼の西洋哲学との対決から捉える試みである。 2.ハイデガーの「ソピステス講義」の研究に基づく拙論「『存在と時間』から『ソピステス』ヘ」(1993)をさらに発展させ、ハイデガー・シンポジウム(1993年7月、早稲田大学)において、「イデア論と『存在と時間』」として発表した。この成果は、「プラトン-西洋存在論の射程」として、『ハイデッガーを学ぶ人のために』に発表予定である。 3.ギリシア哲学の批判的継承として『存在と時間』を解釈する試みの成果として、「『存在と時間』における道具分析の存在論的射程」を書いた。ギリシア哲学との関わりで、ハイデガー哲学を新たに読み直す作業は、極めて有効であり、この方向で『存在と時間』の射程を明らかにすることを、進めている。 4.「ギリシア哲学の批判的継承」という研究視点は、ハイデガー研究を越えて、カント『純粋〓性批判』の研究を促進させた。その成果は、「存在論と超越論哲学」として発表予定である。 5.ハイデガー全集が刊行されつつあるが、特に『古代哲学の根本概念』(1926年夏学期講義)は、私の研究目的にとって、極めて重要である。今年出版されたこの講義に基づいて、私の研究課題を、さらに発展させることができる。以上の成果を著作として出版できるようにしたい。
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