研究概要 |
本研究「自我論と情念論の研究」は,平成5年度から平成7年度の3年間にわたって研究を遂行する予定で開始され,本年度は特に,この問題を「科学的観点」から省みて,さまざまな科学的アプローチとの対決を目指すことを主眼とした。 その際に樹てられた具体的な研究課題としては,1)自我と情念の「無意識」の基底へと眼を向ける「深層心理学」の検討,2)社会心理学的な自我論・パーソナリティ論の検討,3)現代の大脳生理学・進化論・心身問題等の検討,4)「心」をめぐる現代の英独仏,とりわけ仏の現象学的研究の検討-などが,中心的問題として,見込まれた。 これらのうち、特に,フロイトとユングらの深層心理学的アプローチの基本的問題点の掌握と吟味は,かなりの程度,達成され,すでにその成果の一部は,拙著『芸術の哲学』の中にも盛り込まれた。 けれどもその他の課題については,なお研究が十分に成熟しておらず,これらについては,次年度に持ち越さざるをえない状況となった。その理由は,この間に「歴史の哲学」という研究課題が急遽浮上し,これの成果の積めに忙殺されたからである(この方面の成果は近刊予定である)。それゆえ,次年度には「脳と心」や,前年度からの「フィヒテの自我論」や,「哲学的人間学」の課題を追究したい。
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