〓康の残した<論>の精確な解読とディスクールのもつ新しさ、認識の発見を読み取ろうとするこの研究では、ひとつには各論のテキストに忠実な訳稿を作ること、注をつけて、その論の意味をたしかめることが前提となる。本年度は、養生論論争音楽論をめぐっての論を中心に、その作業を行い、訳稿とパソコン入力した。注がまだ完成していないので、来年度に残すことになる。これで、<宅無吉凶摂生論>をのぞき、おおむね〓康の論の訳稿は完成する。今年の成果のもうひとつは、上記の養生論と音楽論を、神秘思想とのつながりで論した<〓康における「超越」と「神秘」-養生論、音楽論をめぐって>という論稿を作ったことである。この論稿では、超越でも神秘でもなく、かといって単なる形式論理ともいいきれない〓康の言説のもつ「新らしさ」、その思想の生動を指摘した。来年度は、さらにこの観点を広げてみてゆくことを考えるほか、言語哲学についてのいっそうの解明を期すことにする。
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