餌や水を剥奪する場合、それ自体動物に大きなストレスであるが、剥奪の割合(日数)が50%であっても、1日おきに規則的に剥奪する場合と、実験期間を通じ、いつ剥奪されるかを予測できない事態とでは、後者の方が前者に比べ、よりストレスフルとなり、精巣発達と体重増加を抑制することが、昨年度の実験から明らかにされた。 一方、ある種の動物達は餌の不足する厳しい寒い冬には、このような環境と真正面から対決するというよりは、むしろこれを回避する行動をとることが知られている。自己の代謝と体温を著しく下げ、生きるに必要とされるエネルギー消費を極力節約することにより、冬を乗り切る。これが冬眠である。 これまでのいくつかの研究によれば、冬眠が起こるためには精巣が萎縮していることが必要であることがわかってきた。そこで、本年度においては、同じ割合の水の剥奪であっても、いつ剥奪されるかを予測できない事態は規則的な剥奪と比べ、よりストレスフルであり、精巣発達の抑制は大きく、そのためにより早く冬眠に入り、より長く冬眠するという作業仮説をたて、実験検討した。 被験動物には雄のシリアハムスター36匹を用い、統制群(N=12)、規則剥奪群(N=12)、ランダム剥奪群(N=12)の3群を設けた。実験群の2群においては実験期間中50%の割合で水を剥奪した。結果は仮説に従い、ストレスフルなランダム群が、他の2群に比べより早く、より長く冬眠した。
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