研究課題/領域番号 |
05610084
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
佐藤 公治 北海道大学, 教育学部, 助教授 (60113669)
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研究分担者 |
城谷 ゆかり 北海道大学, 教育学部, 助手 (70235761)
若井 邦夫 北海道大学, 教育学部, 教授 (40000632)
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キーワード | 遊びテーマの共有化 / 社会的相互作用 / 縦断的研究 / 生態学的観察 |
研究概要 |
本年度は研究の後半段階として、保育園に在籍している幼児について、自由保育の時間における遊びの自然観察を昨年からの継続で行い、4月より2月まで観察期間でおよそ80時間の観察記録を収集した。主な観察の対象になった幼児は昨年から継続して観察を続けてきている年中児と年長児各20名程度で、昨年度は年少、年中のクラスに在籍していた者たちである。社会的な相互作用分析を行っていくための第1次作業としてのプロトコル分析が、約100のエピソード場面について行われた。これらについては、まず録画されたビデオテープから言語的、および非言語的な相互交渉の内容が逐語記録の形で文字化された。これらのプロトコルデータを基にしながら、プロトコル分析と相互作用分析が行われた。 これらの縦断的なデータの収集・分析の作業と並行しながら、昨年度収集されたデータについての二次分析が行われた。収集された約150の遊びのエピソードを基にして年少、年中、年長の3つのクラスの子どもたちの遊びの成立・展開過程を主に遊びのテーマと遊びのルールの共有化過程と、それらを支えている子どもたちの種々の社会的相互交渉のスキル、合意形成に向けての「交渉」の作業を会話分析とエピソード分析から明らかにしていった。 そこで得られた主な結果は次のようなものである。 1、遊びのテーマの共有化の程度という観点でみると、年少と年中児との間の違いが顕著で、年中児の方がテーマを共有している遊びが倍に増加している。年少児は、テーマを持たないで偶発的な言動で遊びが展開されていくものや、途中でテーマが崩壊してしまうものが全体の6割を占めている。 2、遊びの展開の中で相互作用として子どもたちの間で交わされている行動と発話を8つのカテゴリーに分類して、それらの相互連鎖の分析を行った。その結果、年少児は遊んでいる中にテーマにズレが起きたような時にははじめにもったテーマに固執してそこにもどるような修復の言動が多い。これに対して、年中児や年長児の場合には、新しいテーマの提案やズレた方向に沿って合意を形成していくような調整を行って、多様に変化をさせながら遊びを柔軟に展開していることが明らかになった。
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