(1)関連する理論の検討:常識心理学、帰属理論、暗黙の人格理論などの関連理論は研究者が構築した理論から人間行動をみるのではなく、普通の人の論理構造そのものを対象とする意味で、社会心理学研究の現状に一定の示唆を与えている。またA.F.Furnhamのしろうと理論の視点は特に英国のM.Argyleらの日常生活を素材とした研究の中にさらに広範に展開している。本邦でも社会心理学でのフィールドワーク研究の再認識が起きているなどその方向性は見られる。またドイツでもJ.Rehmらが専門的な予測としろうとの予測についての研究を報告している。両者の差異は内容や結果ではなくて、その予測を作りだす方法であり、しろうとの用いる方法はヒューリスティック原理に依存していることを指摘している。両者はその到達点での差異が決定的なものでないならば、その日常的な有用性や機能の面から検討されることは実りあるものといえる。この点で最近の各種学会での俗信や偏見あるいは「血液型性格学」などを多面的対象としていることは興味ある方向である。 (2)現実生活でのしろうと理論の実証的分析:地域的性格、民族性論、県民性論:ある問題を説明し解決するためにとられる典型的なしろうと理論の特徴を有す。専門家を含め状況を過少評価し人の属性に原因を求めて頻繁に登場する。交通事故に関する投書分析:原因がいずれかに帰せられたとしても、自らの体験に限定した説明であり、ヒューリスティクな解決法の特徴をもつ。電話相談の分析:ネガテイブな問題のため自己防衛的帰属や個人に帰する傾向は最も一般的なものである。回答者である専門家はネガティブと思われる問題性の重大性特異性を否定し、状況に帰属する傾向が大である。理想的家族論:かなり類型的に関係性重視の傾向が見られる。成果は平成6年度の家族心理学会での講演「しろうと理論と家族」及び日本心理学会で発表の予定である。
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