心理的離乳という語が提唱されてから久しいが、実証的研究はほとんどされてきていない。そこで、本研究では、心理的離乳に関する実証的な心理学の研究をすることを目的としている。 研究にあたっては、心理的離乳はある一定の段階を経て達成していくものであるとの洞察があった。それを、事例研究と従来の研究の文献研究をすることによって確認し、心理的離乳の過程を解明するための仮説を設定することが、本年度の研究ではまず初めに行われた。 その結果、青年期における心理的離乳は、5段階の過程を経て達成されると考えることが妥当であることが明らかになった。また、この過程の進行は、親子関係ばかりではなく、同性の友人関係や異性関係にも同様にみられることが、文献研究によって示唆された。これは、研究の当初目的とした「心理的離乳を孤独感を中心とした生活感情の面から解明しようとする」本研究の試みの有効性を確認することにもなった。この点については、現在さらに文献研究を中心に検討を行っているところである。 現在はまた、心理的離乳の5段階を判別するためのスケールを作成することを目指して、上記の事例研究および文献研究をもとにして、各段階の特徴を分析しているところである。このスケールが出来上がれば、心理的離乳を、従来のように漠然と全体的にとらえるのではなく、その進行過程を分析して理解することができるようになる。そして、各段階の特徴や段階移行の契機を、生活感情面から解明することもできるようになる。心理的離乳は、認知面ばかりではなく、感情面が大きく関わっているので、心理的離乳の理解が深まるものと思われる。
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