研究概要 |
平成6年度においては,高校1年生を対象とし,入学後約1か月半にあたる5月中旬から下旬にかけて第1回目の調査を行い,それからさらに約6か月を経過した12月に第2回目の調査を行った。調査対象となった高校は,姫路市内の工業高校であり,対象者数は320名(男子268名,女子52名)であった。 調査内容は,内藤ら(1987)の作成した「学校環境適応感尺度(SAS)」,52項目からなるSD法尺度「未来イメージ尺度」,および自分の将来の年表と4コマのイラストからなる「将来の自分史」であった。調査の結果,未来イメージ尺度について,4因子が抽出され,それぞれ「評価」「てごろさ(力量性)」「活動性」「快楽志向」と命名された。適応感尺度の6つの因子および合計得点との関係を積率相関関係数により検討したところ,「友人関係」適応感と未来イメージの「評価」および「快楽志向」の間,「進路意識」適応感と未来イメージの「評価」および「活動性」の間にかなりの関連(40以上)がみられた。 また,適応感の上昇した者は未来イメージがポジティブに変容し,将来の自分史にもよい方向への変化がみられた。逆に,適応感が下降した者は,未来イメージがネガティブに変容した。 これらの結果から,高校生の学校適応感は,彼らのもつ未来イメージや将来展望と深く関わり合っており,ここに高校中退の原因の一部があることが示唆された。さらにいえば,高校生の未来イメージや将来観を育てることによって,学校適応感を高め,ひいては学校中退の予防にも効果があるのではないかと考えられる。
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