本年度の研究では、集団レベルの「問題解決」や「意思決定」を、集団による情報処理過程としてとらえた。問題解決や意思決定については、これまでにも多くのことが議論されてきている。しかしそれらのほとんどが個人レベルのものに限られていた。本研究では集団レベルの問題解決や意思決定過程の持つ特質について、これと関連する研究知見は未だ多くないものの、それらを適宜引用しながら考察した。また集団による意思決定や問題解決を、集団による一連の情報処理過程の中に位置づけることによってより多くのことが明確になった。一連の情報処理過程を、「問題の知覚」と「問題のフレイミング」からなる第1ステップ(問題の認識)、「情報の探索と獲得」と「情報の貯蔵」からなる第2ステップ(解決選択肢の創出)、そして「情報の想起」と「情報の操作と活用」からなる第3ステップ(解決策の決定)に分けて記述した。これらに、「実行」のステップが続く。そうすると、従来の問題解決や意思決定についての議論は、ほとんど第3ステップあたりを、すなわち集団による情報処理過程のほとんど最終段階に、光をあてていたに過ぎないことが明らかになった。 これらの情報処理過程モデルについては、今後の研究に対するいくつかの理論的および応用的な示唆とともに研究成果報告書としてまとめた。 なお、本年度の後半には、集団内に存在する情報(成員間で分有されている情報)が、どのような条件のもとで促進されるかについての実験室的実験も行い、分析を進めている。情報の共有は、役割分担を決めたときに抑制され、逆に議論に出てきた情報を集団内で書き留め明示することで促進されることが明らかになりつつある。時間的制約のために全ての分析結果を報告書に掲載することは出来なかった。今後、雑誌等で公刊する。
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