異方向に全速力で進行する2つの大集団が衝突するような状況を構成した。そして衝突角度の違いが衝突時の集団全体と集団の個々の成員の挙動や離合効率に与える効果について検討した。実験の結果、集団の衝突角度が大きくなるほど、衝突時の混乱は大きくなり、離合に要する時間も長くなる傾向が見られた。しかし衝突・離合のプロセスは衝突角度に関わらず同じようなパターンが観察された。即ち衝突の初期においては、ほぼ同じ人数の成員が高速で交差点を離合・通過するが、しばらくすると一方の集団Aの流れが他方の集団Bの流れを完全にせき止める。そのために一定時間、集団Bの成員は1人も交差点を通過できなくなる。そのうち集団Aの流れが衰えてくると、集団Bの先頭がくさび型の形になり集団Aの間をすり抜け始める。そうすると2つの集団が交差点で入り乱れ混乱状態となる。交差点内の人の密度も最大となる。そのうちに集団Bの流れが強くなり、集団Aが今度は逆にせき止められる形になる。そして最後には両集団とも密度が低くなりスムーズに離合するようになる。 上述のように2つの大集団が衝突する場合の角度の効果と衝突のプロセスについてのおおまかな傾向は明らかになったが、詳しい分析は困難である。衝突の際の転倒による事故の発生を最小限にするために、被験者が素足で運動できる体育館で実験を行った。しかし使用した体育館にはカメラを天井から吊るす設備も場所もなく、やむをえず斜め上から集団の動きを撮影せざるをえなかった。そのために個々の被験者の動きを正確に捉らえることが難しくなってしまった。また、2つの集団の成員を識別できるようにするために、集団によって色が異なるはちまきを全ての被験者にしてもらったがこれも不十分であった。来年度は被験者に赤白帽子をかぶせ、さらに真上から撮影することによって明確なデータを得ることを試みたい。
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