大集団による衝突状況を作り、集団の衝突角度(正面と90度)と優先者の有無の要因を導入し、集団全体の挙動と個人の行動を明らかにすることを試みた。60cmの正方形のマスが縦横に9つずつ並ぶ81区画からなるメッシュ状の交差点上を被験者が移動するような実験状況を設定した。被験者はそれぞれ60人より成るAB2つの集団に分けられた。A集団には全員に白帽子、B集団には赤帽子をかぶせた。さらに黒の袋を頭から被った被験者を優先者とした。被験者に与えられた課題は、この交差点を次のようなルールに従ってなるべく早く通り抜けることであった。実験者の"はい"の合図とともに被験者は1区画ずつ移動(前後、左右、斜めの全方向)するか、止まるかのいずれかであった。1マスには1人しか入れなかった。優先者と被優先者が同時にひとつのマスに進入しようとして衝突した場合には、優先者はそのまま進めるが、非優先者はもとの場所に戻り、さらに次の合図でもその場にとどまらなければならなかった。優先者どうし、非優先者どうしの衝突の場合は、全て合図の前のもとの場所に戻らなければならないが、次の合図では動くことが可能であった。 実験の結果、正面衝突条件の方が90度衝突の条件よりも大きな混雑が生じ、集団がすれちがって離合するまでの時間が長くなった。90度衝突の場合は対角線にそって流れが生じ、その流れに従ってかなりスムーズな移動が行われた。正面衝突の場合は平行な人の壁が生じてそれが長時間にわたって解消されなかった。また優先者の存在の効果も明らかになった。すなわち優先者がいる条件の方が、いない条件よりもスムーズな離合が行われた。これは衝突時の葛藤解決が速やかに行われたためであろう。それから優先者の存在の効果は正面衝突条件で顕著に見られた。すなわち衝突角度と優先者の有無の間に交互作用が見られた。
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