一般的には、現代農村における高齢者の就労形態は、後継世代の農外就業の深化によって、農業経営における高齢者の役割の増大と特化が顕著にみられ、労働力互助を困難にさせている。秋田県内における農業経営の典型的な4事例においても、この傾向はあてはまり、高齢化社会における農業の将来展望に問題を残している。高付加価値をめざす大曲市松倉地区の有機無農薬栽培グループの活動は、平成5年度の朝日農業賞の対象ともなったものであるが、稲作と畜産農家という農家相互の互助はあるが、労働力の互助はほとんどない。また、農業労働力の高齢化につれて、有機無農薬栽培そのものが大きな岐路にたたされている。メロンの主産地形成をはかってきた八竜町浜口地区においても、多少の労働力交換が行われているが、農業労働の主体が高齢者であることから、家々の経営に他の家の高齢者労働が組み込まれることはない。大潟村は、入植者の高齢化にともない、高齢者の生活が大きな問題となっている。もともと農業経営における手間替えやユイが極端に少ない大潟村の高齢者労働は、経営委譲者を中心に、大潟村特産振興公社の内部につくられた野菜生産グループを通しての活動主体となっており、また老人クラブの活動として行われている。これらに対して、家々の複合経営の形態が異なる羽後町嶋田では、個々の作業部分に労働力の互助が行なわれることによって複合経営が可能となっており、また、高齢者の日常の活動も多く行われている。これらの事例を通して、現代の農業経営における高齢者の労働力交換は地域の内部で、組織的系統的に行われることはないが、個別の対応では農業経営の継続が困難となっている農家も多いことからも、そうした方向が模索される必要がある。いずれにしても、本研究は、3年間の継続研究として申請したものであり、残された課題も多く、今後引き続き研究を進めていく予定である。
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