I.平成5年度には以下の研究実施計画をたてていた。 (1)地域農業の振興に高齢者を位置づけ、地域活性化をはかっている事例を訪問調査し地域農業と高齢労働力との関わり、農民の家族関係及び生活構造の特質を調査する。 (2)高齢者に対する地域福祉のすぐれた事例を訪問調査し、施策の内容、高齢者及び地域への影響を地域の生活構造、家族構造を視野にいれて調査する。 (3)高齢者に対する生涯学習が行われている活動事例を訪問調査し、活動の内容・形態、高齢者の生活意識を地域の生活構造、家族構造を視野にいれて調査する。 (4)実態調査結果の整理集計を実施し、分析を行う。 (5)平成5年度の成果とあわせて研究成果をまとめる II.これに対して本年度実施したのは、(1)から(3)、および(4)の1部である地域農業の振興に高齢者を位置づけている事例を分析した。次のような知見を得た。(1)地域の生産活動に位置づけ労働・経営能力をひきだすことは、高齢者の生きがいづくりにきわめて重要であった。(2)その際、生産協同活動を地域に整えていくことが重要であること、とくに、「集落」や「家族」のしがらみから解放され、対等・平等な集団の中で個人として行動する場を整えることは女性高齢者にとって重要であった。(3)高齢者の潜在能力をひきだす地域組織の活動が重要であった。(4)以上のことは、地域住民全てにいえることであり、地域の民主主義的関係をいかに形成していくかが鍵であることが分かった。 III.今後、高齢者の自立理論の研究、高齢者に関わる地域福祉の事例分析、生涯学習による生きがいづくりの事例分析によって、地域変動下の高齢者の自立に関する理論的・実証的課題について明かにできるものと考える。
|