研究概要 |
本研究の目的は、一方における1920,30年代の世界史的変化、他方における文化的価値や社会的地位の変容・変換、これら二重の変動の場に置かれた一群の社会学者の「知的生産」の特性を全体として明らかにすることにある。かれらは、ファシズム-大戦、大恐慌などの歴史的激変を体験し、また、亡命やレジスタンスや移住などにより自らの文化的、社会的基盤の変更を余儀なくされた。本研究は、このような歴史的(通時的)、構造物(共時的)変動を念頭に置きながら、一群の社会学者の科学的業績と、それに影響を及ぼすと想定される歴史的、文化的、社会的、生活史的諸要因の全体との関連について、知識社会学的な理論的枠組を確定しようとする。 本年度の研究実績の概要は次の通りである。 1.フランス系社会学者、M.Halbwachs(1877-1945),G.Gurvitch(1894-1965)、C.Levistrauss(1908-)を調査研究対象として選択し、かれらの業績を、一方において、かれらの出身・経歴・階層と、他方において、社会主義や労働運動やファシズムへの態度と、関連させた。そして、西欧社会/未開社会、社会の一元性/多元性、社会構造/社会動態の対立項について、かれらがどのように考えていたのか、を部分的にではあるが、相互に比較検討した。 2.ドイツ系の亡命社会学者、K,Mannheim(1893-1947)、M,Horkheimer(1895-1973)、T.W.Adorno(1903-1969)を選択し、かれらの出身・経歴・階層と業績との関連について吟味した。そして、ドイツ型大衆社会と英米型大衆社会の両タイプの社会をかれらが体験したことが、かれらの社会学の「理論的変容」をいかにもたらしたのかについて、検討した。 3.多様な文化的背景と学問的経歴をもった社会学者たちの交流の場を提供した。つぎの二つの教育・研究機関について調査した。 (1)亡命大学といわれた、アメリカ、ニューヨークのThe Graduate Faculty of Political and SocialScience of the New School for Social Research. (2)辺境の新興大学である,フランス,ストラスブールのUniversite de Strasbourg.
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