本研究は、1920、30年代の世界史的変化、および、文化的価値・社会的地伐の変容という二重の変動の場に置かれた一群の社会学者の「知的生産」の特性を明らかにしようとする。すなわち、歴史的かつ構造的な変動に焦点をあてながら、かれらの科学的業績と、それに影響を及ぼすであろう歴史的、分化的、社会的な諸状況との関係について、知識社会学的分析を行い、その理論的な大枠を素描する。研究成果の一部は次の通りである。 1.フランス系社会学者、アルヴァックス、ギュルヴィッチ、レヴィニストロースの業績を、かれらの出自・経歴・階層、および、社会主義力全体主義への態度と関連させることによって、西欧社会/未開社会、一元的/多元的、静態的/動態的な社会観などの対立項について、かれらがどのように考えていたのかを担るに比較検討した。2.ドイツ系主命社会学者、マンハイム、ホウクハイマー、アドルノの業績を、かれらの出自・経験・階層に関連されることによって、ドイツ型と英米型の二つの大衆社会の体験がかれらの社会学の「理論的変容」にいかなる作用を与えたのか、を検討した。3.以上の検討の結果、フランスでは、社会学の変容とは、デュルケーム社会学の厳格な体系への種々の反応であり、この意味で、ディシプリンとしての社会学とその制度化(「ストラスブール大学」の「ニュー・スクール・フォア・メーシアル・リサーチ」)のレベルで生起したと考えられる。そして、ドイツでは、変容は、二つの型の大衆社会の差に対する鋭い反応から起り、この為で、社会や社会学に対する、知識人の歴史的・批判的な感覚が問題となる。 このように、ヨーロッパ(仏・独)、社会学の知識社会学的な解明にあたっては、「ディシプリン」、「制変化」「大衆社会」「知識人」が考慮すべき要因となるだろう。
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