本研究は、企業と地域社会との関係を、企業の社会的貢献活動に焦点を当てて分析しようとするものであった。その目的を達成するために、以下の4つの調査研究が計画され、実施された。 1.企業の社会的貢献活動にかんする資料収集と先進事例聴取調査 2.山口県下の企業の社会的貢献活動にかんする実態調査 3.地方都市における企業の地域活動の聴取調査 4.地域住民の企業の地域活動にかんする意識調査 これらの調査研究の結果、以下のことが明かとなった。 1.企業の社会的貢献活動は、1990年代以降全国的に活発となってきたが、山口県においても、企業の関心は高まってきている。 2.企業の地域社会との関係が深まれば深まるほど、貢献活動がより多くなされており、いったん開始された活動は、営業成績の如何に関わらず持続される傾向にある。 3.地域社会における企業のネットワークは多重的であり、社会的貢献活動は、単独事務所で行われるのみならず、企業系列のネットワークや、地域ネットワークを通じて行われている。 4.地域住民の企業の社会的貢献活動に対する認知は、必ずしも高いとはいえないが、企業の活動は確実に地域住民に影響を与える。メセナ活動を通じての地域文化の向上に、企業が一役を買うことも可能である。 5.企業は経済活動を地域社会に対する重要な役割だと考えているが、地域住民は、企業の環境保全活動に関心を寄せており、社会的貢献活動に対する、企業と地域住民の意識の間には、大きな違いがみられる。 以上のことより、地域社会の一員としての企業のあり方と、企業と地域社会との協調的発展の現実性と可能性とが明かとなり、組織連関としてのコミュニティ論に一石を投じることができた。
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