「地域と教育」研究の一貫として、農村の地域生活の変化や生涯学習も含みつつ進められようとしている地域づくり計画の問題を踏まえ、地域づくりを支える学習活動の現時点の特徴と問題点、および性格を明らかにすることを目的として、調査を実施した。対象地は、純農村地域の秋田県大雄村と混住化進行地域の宮城県矢本町を取り上げた。 大雄村については、役場・農協等で聴き取りおよび資料収集を行い、人工・産業・就業構造等の特徴、生涯学習活動の現状を把握した。また、補足資料を得るため、秋田県社会教育課・生涯学習センターでも聴き取りを行った。大雄村では、若年層の流出への対応として、行政主導による地域づくりのための学習が展開された。東北大学開放講座「大雄村民大学」の開設、「創造21集団」という世代毎の学習集団の組織化を通して学習と実践が展開され、そこから住民の自発的活動に取り組むリーダーが育ちつつある。ここでは、行政の呼びかけによる活動が、住民の広範囲な自主的活動(地域づくり)にどう転化していけるか、その際のポイントは何か、が地域の課題となっていることを明らかにした。 矢本町では、役場・赤井公民館・赤井地区コミュニティ推進協議会で得た資料に基いて、産業・就業構造および社会教育活動の把握に努めた。ここでは公民館の分館(赤井地区五分館)活動の積み重ねがコミュニティーづくりに生かされている。しかし、分館という小範域でのまとまりが良い反面、地区全体での協同とどう調和させていくかが問題であり、そこに公的社会教育がどのように役割を果たせば良いかが課題であることを明らかにした。いずれの調査地においても、住民の学習活動と行政との接点、公的社会教育がどこまでを担うのかを明確にしていくことが、地域づくりを考える際の今日的課題であることが浮き彫りとなった。細かい分析は次年度に引きつがれる。
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