高齢者介護が重介護ニードのある場合でもその主要部分が家族により担われている状況にある。要介護高齢者の増大傾向に対し、家族環境は著しい変容を遇げている。介護機能の低下に対応した家庭サポートニードと介護に関する家庭関係の社会援助ニード発生過程を明らかにし、さらに事例研究を通じて介護家庭の社会関係による類型的把握を試みる研究を行った。本研究は、1.具体的地域における要介護高齢者ケアを担う家庭実態を踏まえた介護家庭の社会関係とそのサポートニーズの特質に関する調査、および、2.要介護高齢者の在宅ケアにあたっている家庭の介護発生過程を含む社会関係の社会過程に関する反復訪問調査による事例研究、の二者から構成されている。第一は、東京都八王子市を対象地域として、おむつ支給サービスの利用家庭の介護担当家族員を対象とした面接調査を実施し、108家族の回答結果が得られた。調査結果からは、家庭介護を受けている高齢者の性比が、男性61.1%、女性38.9%、年齢階層では75-84歳層 51.9%、85歳以上、32.4%で、重介護が92.6%であった。ケア主担者は嫁46.3%、妻27.8%と非同居の嫁が主担者の場合が含まれるなど、家庭ケアは担い手の大部分が女性であり、ケアの受け手は超超高齢層より超高齢層の男性が多いことが明らかとなった。また、住居所有率が88.9%、住居期間では20年以上居住が65.0%に対し2年未満は3.7%である。これらの知見から、介護機能に家庭的条件が大きく作用しており、介護の家庭関係の成立・形成条件と非形成状況とが明らかにされる結果が得られた。第2は、八王子市、日野市、三鷹市、渋谷区、台東区、静岡市、西宮市の10事例研究で、介護家庭に対する家庭ヒストリーの聞き取り調査で、家族内関係、医療や福祉援助等の社会資源との関係構造、社会関係の変容と再構築に関する結果が得られた。さらに分析を加え研究結果の論文を作成中である。
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