1990年の新入管法の施行によって、日系人2、3世並びにその家族の定住が認めら、逆移民ともいうべき、移民の還流現象が生起した。1908年以来、伯国へ、25万人余の出移民を行ったが、この5年間のみで、これを越える日系伯国人が来住した。急激な流れの中で、ホスト社会との社会適応などの問題が発生している。また、逆移民送出国の伯国における日系社会の変動も顕著である。本研究では、伯国の日系移民社会の生活構造・意識の変動を捉えつつ、日本へ根をはりつつある日系人労働者家族を、生活構造・意識の視点から、過去2ケ年にわたり、実証的・総合的に調査研究を行った。 群馬県太田市、大泉町や浜松市など、企業城下町といわれる地方中小産業都市では、日系人が外国人労働者の中心を占め、欠かせない労働力になっている。不況にも関わらず、人手不足は変わらず労働力として定着している。大泉町では外国人登録人口が町民の6%弱に相当する。浜松市でも近年日系人は再度増加基調にある。しかも、妻、子、親.兄弟.姉妹などの家族呼び寄せが進んでいる。南米の景気低迷、政情の不安定、治安の悪化などもあって、伯国を離れ、日本に定住したい層や、日伯両国に生活拠点を置いて暮らす、半定住層が現れてきている。かれらは、在日のブラジル村ともいうべき、広域ネットワーク社会を形成し、さらに定住基盤を確保しつつある。一過性の出稼ぎから定住へと変化しつつある。受け入れ側の行政サイドは、かれらを単なる労働力としてではなく、定住性をもった、生活者・住民として受け入れてゆくことを求められ始めている。このように、かれらの受け入れのための適切な各種の生活基盤の整備が必要になってきている。日系人の雇用、医療・福祉、居住、子女教育、地域や職場での受け入れなど種々の行政ニーズが発生している。 日本とブラジルの双方に生活拠点をもちながら、行き来しながら暮らして行く、半定住移民層の存在を明らかにしたことを付記する。"コスモポライト"といわれる新移民である。トランスポ-テーション革命といわれる、テクノロジーが可能にした、移動性に富む、「半定住民」である。
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