平成5年度および6年度において六島、真鍋島、北木島楠地区、北木島豊浦地区、白石島、高島、飛島各島住民の流出・回帰の実態について調査を実施した。それに基づいて平成7年度は流出した住民がふるさと回帰をどう意識しているかを調査した。笠岡諸島出身者が集住している笠岡市美の浜地区の調査を通して流出者の回帰性の問題にアプローチした。 美の浜地区は笠岡湾を干拓してできた(1984年完成)新しいコミュニティーで1995年の調査時点で241世帯の住民がいた。その内世帯主、配偶者あるいはその父母が笠岡諸島出身者である場合が25.2%であった。その60%が北木島出身者であるところから北木島楠地区および豊浦地区の住明の意識を比較することによって流出者のふるさと回帰の可能性を探ろうとした。 北木島に現住する者は流出した者との交流を続け、流出者の回帰が行なわれるよう努力している。しかし、美の浜地区に流出した者からみれば、定年退職後ふるさとへ帰りたいと考えている人は25.0%しかなく、58.3%は帰るつもりはないと答えている。その理由は、ふるさとの家はセカンド・ハウスとして使えばよい、他の家族が住んでいる、生活に不便であるといったものであるが、それより重要なことは、流出に際して既に家を処分してしまった人が25.0%いることである。コミュニティーの内側からだけ見るのとは違った様相がある。 流出者はふるさとの島が経済的に発展して、現代的意味での生活資源が十分獲得できるようになっても回帰したいと考える人は50%しかいない。北木島の場合、一度も流出したことのない人と、流出した人の半分以内で回帰する人によってコミュニティーを維持存続させていくことになる。
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