平成5年度補助(0561074)により実施した調査研究は、現代社会における出産と医療の問題に関する文献研究、および妊娠・出産を契機に構成された自発的なグループの女性(「自然育児友の会」「ぐるーぷ・きりん」「陣痛促進剤の被害を考える会」)とこれらの会を支援する助産婦に対しインタビューを行った。 これらの資料と「ぐるーぷ・きりん」によって収集された490名あまりの出産経験者のアンケート結果のうち、とりわけ記述された言葉をそのまままとめたコメント集をデータとして検討した結果、次のような示唆を得るにいたった。すなわち、現代社会における出産は「産む側」からみた場合、いくつかの局面に分節化できるということ。出産が女性にとってはどのように体験され受け止められていくのかをみる上で、これらの局面を構成する複数の要因が存在し、それらが条件として働いたときに、出産の現場で体験されたことがらが受容されたり、あるいは納得のいかないものとして問題視される、ということである。 出産への医療介入の中で会陰切開を一例に挙げると、母子の安全性という目的をどの程度内面化しているか、産婦側の医師観、医療者-産婦の相互作用、痛みの程度、出産に先だって産婦がもっていた会陰切開観などが挙げられる。さらに分娩台、陣痛促進剤の使用、誰が立会うか、産後の母子の距離といった局面においても、同様な形で要因の析出が行われた。 これらの分析をもとに、次年度の調査研究では病院出産経験者と助産院出産経験者に対しインテンシブ・インタビューを試み、これらの要因の関連をさらに検討していく。
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