近年、学習障害児を含めた軽度障害児に対する教育的処遇の問題がクローズアップされてきている。こうした学習困難児(Learning Difficulties)達は、その原因に中枢神経系の偏りが示唆されるため、極めて多種多様な状態像を示す。例えば学力が期待されるよりも低い、多動で落ちつきがない、初語の遅れや構音の障害がある、さらに二次的な障害として、意欲や自信にかける等様々である。しかし、彼らの中に学習上の諸問題とあわせて、身体機能面、特に協応運動能力に遅れの目立つ児童・生徒(Clumsy Children)の多いことが、各国の研究者によって確認されている。そこで、我々は本研究において対象とした学習困難児の運動的な側面、特にClumsyの問題について、関連資料収集のために、USA、ドイツ、オーストラリアを中心とした文献の収集・検討を行った。また、学習困難児の実態調査を普通学級(小学校2校、6歳〜12歳の児童約700人)、精神薄弱養護学校(2校、約80人)において行い、新たに事例研究をスタートした。そして、本研究代表者を委員長とする横浜市における学習上特別な配慮を要する児童・生徒の教育に関する実態調査により明らかになった、彼らの困難に関する5つの因子(教科指導・不器用さ・多動・生活習慣の未熟さ・社会性の未熟)を検討し、前述した関連研究の基礎データとあわせて、Clumsy Childrenスクリーニングテスト(CCST)の開発に向けて、一時試案を作成した。さらに、当初の研究計画には含まれなかったが、学習困難児の早期発見と発達支援のために、「幼児の身体協応性」に関する実験調査にも着手し、幼児のための簡易Motor Performanceテストの試案を作成中である。
|