研究概要 |
近年、学習障害児を含めた軽度障害児に対する教育的処遇の問題がクローズアップされてきている。こうした学習困難児(Learning Difficulties)達は、その原因に中枢神経系の偏りが示唆されるため、極めて多種多様な状態像を示す。例えば学力が期待されるよりも低い、多動で落ちつきがない、初語の遅れや構音の障害がある、さらに、二次的な障害として、意欲や自信にかける等様々である。しかし、彼らの中に学習上の諸問題と併せ、身体機能面、特に協応運動能力に遅れの目立つ児童・生徒(Clumsy Children)の多いことが、各国の研究者によって確認されている。そこで、我々は、本研究代表者を委員長とする横浜市における学習上特別な配慮を要する児童・生徒の教育に関する実態調査から明らかになった、彼らの困難に関する5つの因子(教科指導・不器用さ・多動・生活習慣の未熟さ・社会性の未熟)を検討し(小林他,1994;松永他,1994)、関連研究の基礎データとあわせて、Clumsy Childrenスクリーニングテスト(質問形式、以下CCSTとする)を開発した。このCCSTは、教科に関する質問が10項目、動きのぎこちなさに関する質問が20項目、生活・行動に関する質問が10項目の、計40項目で構成されている。我々は、神奈川県下の小学校児童(2年)328名を対象として、CCSTを実施した。現在、本検査の信頼性、さらに、本検査によりスクリーニングされたClumsy Childrenの実態・特性等について検討を進めている。加えて、Clumsy Childrenの臨床研究を行い、彼らの発達援助のためのム-ブメント教育プログラムの開発に向け、理論構築を図っている(これらの結果については、日本特殊教育学会第33回大会で発表予定である)。
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