研究概要 |
近年、学習障害児を含めた軽度障害児に対する実態調査や指導法の検討が進められている。しかし、教育現場では、彼らの学力面での問題が重視され、運動面での問題は軽視される傾向があり、彼らのClumusyという動作の現象は、単なる運動の経験不足、または発達の一時期の兆候としてとらえている。そこで本研究は、学習困難児の運動的な側面、特にClumusyの問題に視点をおき、この動作の現象をより多角的に捉え、神経心理学的側面に分析し、具体的な指導援助につなげるためのClumsy Childrenスクリーニングテストの開発とその適用について検討することを目的とした。 我々は、Y市における学習上特別な配慮を要する児童・生徒の教育に関する実態調査(対象児数:75,092)から明らかになった5つの因子(教科指導・不器用さ・多動・生活習慣の未熟さ・社会性の未熟)を検討し、質間紙法によるClumsy Childrenスクリーニングテスト(動作のぎこちなさ、教科、生活・行動の三領域、40項目)を開発した。そして、小学校児童(2年)328名(男子179名・女子149名)に適用し、本検査の信頼性、さらに、スクリーニングされたChumsy Childrenの実態・特性等について検討を進めた。その結果、グレイゾーンの児童を含めると、35名の児童が運動面での配慮を必要とする子供であることが明らかになった。加えて、この35名についての臨床的な研究の結果、彼らは、巧緻性、力動的エネルギー因子に、ついで、身体意識、バランス、微細運動の順に全体の平均に対して有意な差をもって遅れが認められた。そこで、彼らの発達援助のためのム-ブメント教育プログラムについて検討した結果、M.FrostigのMGLプログラムをベースに、巧緻性・力動的エネルギー・身体意識・バランスの各因子を含めて基本コンセプトを作成していく必要性が示唆された。
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