(1)教師発達に関する海外の研究文献調査をおこなった結果、得られた知見は次の三点である。(1)「教師発達」は世界各国の共通課題であり、とりわけこれまでそれほど十分には検討されてこなかった「現職教育」が大きな研究対象となっている。(2)教師発達の環境として学校現場が捉えられ、各学校での学校教育改善への取り組みが教師発達を促進するという理論的検討がなされている。(3)以上の観点から日本の現職教育を再検討すると、「同僚教員間連携」「実践研究者としての教師」「やわらかい学校」「教師教育研究」の4点からの諸課題を指摘できる。(2)桑名市内の小学校での地域教材開発に関する校内研修と、名古屋市教育センターでの校外研修の参加観察をおこなった結果、得られた知見は次の三点である。(1)いずれの研修も勤務学校での教育課題の検討という形態をとる。(2)なかでも校内研修においては「学校組織文化」の形成・維持・発展を「学校組織学習」として全体的に展開しうる性格をもつ。(3)教師発達は、勤務学校の教育課題を解決するための学校組織学習を通じて十全に達成すると考えることができる。(3)校内研修の参加観察をおこなった小学校に勤務したことのあるさまざまな教師に対するインタビュー調査を実施した結果、各教師の「生活史」において、一定の「学校組織文化」を学習することの意義が教師発達の観点から、知識・態度・技術などの諸点にわたって明らかにされた。(4)以上のような知見を中心に、平成5・6年度にわたる研究成果を集大成し、単著書の原稿として『変動社会の教師教育』(400字詰原稿用紙826枚)を執筆した。この原稿は、名古屋大学出版会によって平成8年2月に刊行されることが決定されている。
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