本研究は、1973年に公布されたノルトライン・ヴェストファーレン邦の政治教育の指導要領の普及のために計画された現職教育の構想を対象として、それらの現職教育において教師が習得する、(1)指導要領の構造の理解、(2)資質の学習目標への具体化の方法、(3)授業計画資料にもとづく授業計画の方法、(4)教材やメディアの選択方法、(5)評価方法が、教師の授業実践(計画-実施-評価)のどの段階にどのような影響を与えているかを明らかにすることを目的としている。 本年度は、次の点を明らかにした。 1・「受講者相互のコミュニケーションを基礎とした現職教育」の構想は、受講者が討論を始めるための具体的な質問カタログを開発していて、それは、教材の一般的特徴に関する質問、世界観、価値、システムなどの外部構造の諸関係に関する質問、カリキュラムの決定に関する質問、教授学の原理や学習過程などの内部構造に関する質問から構成されている。 2・現職教育は、政治教育の指導要領の普及の機能と同時に検証の機能を持つ。 3・1980年代には、教育学全体の傾向は、批判理論と合理主義の対立から多元化へ移行しているのので、1970年代の現職教育の構想を、現代的意味から捉え直し、再評価する必要がある。 4・5つの政治教育の授業をVTR記録し、発言者を特定し、記録を整備したが、それをもとに、子どもの思考過程の変容から、授業を分析する必要がある。
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