本研究は第1年度において地方教育事務所の設置府県と非設置県との比較調査を、第2年度では全国288の事務所に対する質問し調査を実施し、その成果から次の知見を得た。 1.事務所の設置は、戦前の府県における地方事務所を母体とし、戦後の教育委員会制度の導入によって府県教育委員会の地方出先機関として受け継がれた場合が多く、住民にとっても理解しやすい地域性をもっている。 2.設置府県は非設置県に比して、教育行政機関の学校管理が緻密になされている半面、個々の学校の自主的な経営裁量を制約する傾向があり、事務所は学校に対してより専門的、助長的に関わることが必要である。 3.府県教育委員会一事務所と市町村教育委員会の学校管理機能の関係は市町村の規模によって異なり、大規模市に対する関与は相対的に少ない。 4.事務所の所管地域は、府県教育行政における異動人事、教科書採択、指導主事活動の地域単位だけでなく、各種の研究、研修組織や校長会、教頭会等の単位となっている場合が多く、種々の活動が相乗的に関係し、相互に複合的な効果を生み出している。 5.指導主事の職能は、府県教育委員会本庁、事務所、市町村教育委員会において実際上は異なっており、それに対応した年齢、経験等を異にする任用がなされている。 6.設置類型によって一様ではないが、事務所単位の教育行政は人事行政、指導行政の両面における小中学校管理において合理的、効率的な纏まりとして理解でき、府県と市町村の教育行政機能を事務所を軸とする形で再編成することが検討されるべきである。
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