1.本研究は、教育長の管理行動の内容と性格を明らかにするために、すなわち、「教育長が実際に仕事で何をしているのか」という管理研究の最もプリミティブで、基本的な問いに答えるために、人類学で使われるエスノグラフィック・アプローチを用いて、教育長の日常の管理行動を分析した。 2.その結果、教育長のリーダーシップ行動について、次のようなことが明らかにされた。 (1)教育委員会のトップ・マネジャーとしての教育長のリーダーシップ行動は、日常定型業務に係わる中間管理職のリーダーシップ行動とは異なることが示唆された。例えば、教育長の場合、組織目標の創造や政治的交渉に係わる行動や資質が要求されるようである。 (2)教育長などの教育行政官は、計画、統制、調整、組織化などの重要な管理機能を担っているという伝統的な考え方があるが、実際には、教育長の仕事は、断片的で、非連続的で、即応性を必要とする。 (3)伝統的教育行政理論では、教育長の意思決定機能がとくに強調されるが、ボトム・アップ型の意思決定がまま多く見られるようである。 3.今後は、本研究で得た知見を一般化できることを確かめるために、事例をさらに増やして追認研究を行う必要がある。なお、本研究成果は、平成6年度中国四国教育学会で発表する予定である。
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