1.本研究は、教育長のリーダーシップ行動の特質を明らかにすることを目的としていた。 本研究の目的を達成するため、先ず(1)エスノグラフィック・アプローチを用いて、「教育長が実際に仕事で何をしているのか」という教育長の日常の職務活動を分析することにより、教育長の管理行動の内容と性格を明らかにしようとした。次に、この結果に基づき、教育長のリーダーシップ行動の尺度を構成し、リーダーシップ・スタイルとその効果性(モラール)の関係の検討を行った。 2.その結果、教育長のリーダーシップ行動の特質について、次のような知見を得た。 (1)トップ・マネジメントとしての教育長のリーダーシップ行動は、日常定型業務に係わる中間管理職のリーダーシップ行動とは異なり、とくに組織目標(ビジョン)の設定や政治的交渉に係わる能力や資質が要求されているところに特色があるように思われる。 (2)教育長は、計画、統制、調整、組織化などの重要な管理機能を担っているという伝統的な考え方があるが、実際には、教育長の仕事は、断片的で、非連続的で、即応性を必要とする側面を持っている。 (3)伝統的リーダーシップ論では、教育長の意思決定機能がとくに強調されるが、実際には、教育長が一人で決定する機会は、我々が考えるほどには、多くはなく、むしろ、ボトム・アッフ型の意思決定が多い。 3.以上の知見は、従来の教育長の職務観の再考を促す。今後は(1)の知見に見られる如く、教育長リーダーシップ行動の価値的側面に着目した分析が必要であるように思われる。
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