1、フランスの教育制度および教師教育に関する多くの文献・資料を収集するとともに、それらの整理をおこないつつ、教師教育に関する簡単な文献リストを作成した。それらの中には、個別の教員養成機関の評価報告書や入学における筆記・面接試験の内容といった、かなり具体的な制度運営の実情に迫ることのできる資料も含まれている。 2、フランスの1989年教育基本法に基づき、段階的に設置・実施されてきた新しい教員養成機関であるIUFM(大学付設教員養成部)は、伝統的な師範学校制度を廃止し、初等学校教員と中等学校教員を同一の機関で養成し、大学院レベルにまで格上げすることにより、教員の資質向上をめざそうとするものである。この機関はすでにフランス全土に改組・設置され、多くの教員を輩出し、一定の成果と実績を生み出しつつある。 3、しかしこの新しいIUFM機構は、1993年3月の社会党政権から保守・中道政権への交代によって、その実施継続がかなり微妙になってきている。同時に1992年から1993年にかけて、中央教育視学官の視察報告書、上院文教委員会および科学アカデミーによる各報告書が相次ぎ出され、IUFMのコンセプションが必ずしも明確でないこと、その実施が極めて拙速かつ官僚主義的に進められたことにより、混乱と障害が存在していると批判分析している。 4、この教員養成制度改革を多面的に検討する必要があり、フランス教育に関する数名の研究者と協議をおこない知見を深めた。現在、この教員養成制度改革とそれに対する多方面からの積極的評価および批判的評価などについて考察を進めており、近く関連学会などで発表することを予定している。
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