1.平成4年秋、本研究への科学研究費補助金を申請した時点で把握していた明治期の不敬事件は31件であった。補助金を得ての平成5・6年度の研究によって、現在把握している不敬事件は104件に上った。このように多数の事件の存在を明らかにしたこと自体、新たな知見であるといえる。 2.104件の不敬事件を検討すると、次に示す三つの顕著な時期区分が可能であることが判明した。 (1)官憲が諸法規を動員して不敬言動を取り締まった「民権運動弾圧期」(明治7〜22年頃) (2)民間でキリスト教徒の不敬が摘発された「教育と宗教の衝突期」(明治22〜28年頃) (3)官民・上下が入り乱れて不敬や偽忠君の言論戦を繰り広げた「忠君と偽忠君の攻防期」(明治29〜45年頃) 3.平成5・6年度に得た知見をもとに、以下の学会発表を行い、および研究論文を発表した。 (1)教育史学会第37回(平成5年10月)大会口頭発表「明治期の不敬事件」(『教育史学会第37回大会発表要綱集録』参照。」 (2)小股憲明「尾崎行雄文相の共和演説事件ー明治期不敬事件の一事例としてー」、『人文学報』73号、1994年1月、京都大学人文科学研究所。 (3)小股憲明「高等学校における不敬事件(一)ー明治期不敬事件の事例としてー」、『人間関係論集』11号、1994年3月、大坂女子大学人間関係学科。 (4)小股憲明「高等学校における不敬事件(二)ー明治期不敬事件の事例としてー」、『人間関係論集』12号、1995年3月、大坂女子大学人間関係学科。 (5)小股憲明「明治期における不敬事件の研究」、平成5・6年度科学研究費補助金(一般研究C)の研究成果報告書、1995年3月。 4.さらに引き続き、(1)未知の不敬事件の発掘、 (2)個々の不敬事件についての事実関係の詳細解明、に努める。
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