現在までに収集した資料の分析や、インタビュー調査により、以下のことが明らかになっている。 1.中南米最古の海外アメリカ人学校の例をたどり、各種の資料から判断した結果、海外アメリカ人学校の多くは海外にすむアメリカ人コミュニティーの内部で自発的に始まった教育活動が次第に発展し、その過程で自然に第三国やホストカントリーの協力を得て、現在の姿となった。アメリカ人学校のオープンな性格はその歴史の中ではぐくまれてきたものである。一方、海外日本人学校は歴史が浅く、成立の経緯が示すように、政府のバックアップが大きく、管主導型でる。日本人コミュニティーのあり方もまだ模索の段階といえる。これらの結果から、コミュニティーの成熟度が学校のあり方を大きく規定するのであり、海外での外国人としてのコミュニティー形成の実情について研究が今後必要である。 2.海外アメリカ人学校は世界中に展開しているが、学校相互間を結ぶコミュニケーションの方法がすでにかなり発達している。ヨーロッパに1、アフリカに2、中東・南アジアに1、中南米に5の団体が組織されており、その活動も、教員のみならず生徒のさまざまな競技会などにまで発展している。行われべき教育の目的が明らかであるために、海外学校としてのアイデンティティが確立されていることが、その基盤となっている。 3.海外アメリカ人学校への政府援助の開始は、中南米におけるアメリカの対枢軸国政策の一環であった。海外アメリカ人学校はアメリカの対外政策と深く関連している。 4.中南米は海外アメリカ人学校の現地化がもっとも進んだ地域であり、しばしばアメリカ市民を上回るホストカントリーの市民を入学させており、地域の名門校として根付いている。しかしながら、中南米の社会体制の中で、階層性を強く反映する存在となっている。
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