現在、府県段階で公立学校行政と私学行政を一元化している秋田、青森、茨城、岐阜の4県を調査した結果、いずれの県でも知事が私学を所轄し、教育委員会が公立学校行政を担当するという現行の法制度の範囲内で、教育長が理事の業務を補助執行していることが明らかになった。そのため、この4県で公立学校と私学にかかる行政が一元化されているととらえるのは正確ではない。このような措置への移行を決定した事情は各県によりさまざまであり、相互に関連あるとはいえないと判断できる。またこの4県では私学の数も少なく、このような措置によって私学の自主性が損なわれるという危惧はほとんど生じなかったことも指摘されなければならない。 一方、近畿圏ならびに首都圏のように私学のシェアが相対的に高い地域では、教育委員会と知事部局の間に効率的な行政を実施するための各種の連携策が講じられている。具体的には公私間の情報の伝達、高校入学定員の調整、職員の人事移動などである。 わが国の場合、近代化を達成するために明治以後とくに国と地方が積極的に学校を設置していった。これにより、学校教育は短期間のうちに全国的に普及するにいたったが、公的機関が教育を独占することになり、民間の試みは前者の補充・補完ととらえられた。このような公私間の役割分担が現在でもみられるために、公私行政の一元化が行なわれると、量的に優勢な公立学校部門に私学が吸収されていく可能性が高い。私学の自主性を尊重し、公立学校と私立学校が互いに競走していくことができるように、公私間の行政部門がより一層連携を強めていくことが望ましいと考えられる。
|