当初、本研究は、全米各州を対象にそれら各州間に存在する制度的異同を分類基準としていくつかの類型を仮説した上で、それら類型の変容過程と発展構造を明確化することを意図していた。しかしながら、米国教科書行政システムは、予想を越えて極めて多様であったため、結局のところ各州ごとのシステムをより徹底して精査しなければ、その実際的態様には肉薄できないことが判明し、研究の方向性をよりミクロ的方向へ修正せざるを得なかった。加えて、それら各州の教科書行政システムは、各々、一定の歴史的変容過程を経て発展してきており、その歴史的発展過程の中から形成されてきた理念的背景をも包摂した各州システムの解明ぬきには正当な意味での本格的かつ総合的研究とはなり得ないことが痛感されたことにもよる。 したがって、当然のことながら、事例的視点から個別各州の教科書行政システムの実態とその歴史的発展過程を詳細に分析した上で、それらを体系化するためには極めて多くの時間を必要とし、そのため所与の研究期間内において着手・解明できたものは州集権的システムを採用するカリフォルニア州における教科書行政システムの歴史的変容過程の解明のみにとどまらざるを得なかった。このことをあらかじめ断わっておかなければならない。上述の研究進捗状況からも明らかなように、本研究には未だ数多くの課題が山積されており、その意味では今後さらに継続研究が不可欠であると同時に、本報告内容はあくまで研究テーマ全体の序説的な役割を有しているに過ぎない。 以下、本研究によるこれまでの具体的研究成果は、次ページに掲示した学位請求論文(「米国初等教科書行政の研究-カリフォルニア州教科書行政の成立・展開過程の分析を通して-」)に集約させている。ご参照を賜われば幸甚である。
|