本研究は、主としてメキシコにおける最近のアステカ文明研究の成果を基礎して、わが国の教育学研究においてはほとんど知られることがなかった古代インディオ文明における教育の思想、習俗、制度を紹介するとともに現代の教育学的観点からみたその特色を考察することを目的とする。 1992年が「アメリカ発見」五百周年、また93年が国連の「国際先住民年」とされたことに関連して、最近、スペイン・中南米諸国のみならず、わが国においても、大航海時代、征服・植民地化の前後のラテンアメリカのインディオ文明に関係する文献の出版事業や古典的著作の復刻などが盛んになっている。本年度は、こうした関連文献(スペイン語、英語、邦語)を体系的に収集し整理する作業を中心におこなった。 1.本主題に直接関連する分析作業としては、メキシコで編集された『アステカ族の教育に関する関係史料集』(十六世紀当時、はじめてこの文明に直接的に接触したスペイン人たちが書き留めた記録類からインディオの教育習俗、制度に関する史料をひろいだし集成したもの)から訳出、分析を行った。 2.また、その成果の一部を、教育史学会第37回大会(於 山形大学)において「先スペイン期インディオ文明の教育史的研究の可能性」の題で口頭発表を行った。 3.アステカ族の伝統的な教育の慣習や制度と征服・植民後にスペイン人の展開した対インディオの教育事業の連続性と断絶という観点の分析を中心として、論文『ラテンアメリカ教育史の原像』を執筆した。
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