第1年目の研究計画の達成状況については次のとおりである。 1 映像記録の作成は沖縄本島北部東海岸の一村落において、年中行事の一部について神役の行為に注目した記録を得ることができた。 2 この調査において現地の字誌作成過程で収集されたスチール写真の存在が分かり、これも本研究の資料として加えることができた。スチール写真については本研究が映像記録に焦点をおいていたことから、あまり注目していなかったものであるが、一定の画面の切り取り方から撮影者の意図をうかがうことができ、当初の計画を若干修正して、今後ビデオ映像とともに考察の対象にしていくことにしたい。また、字誌の編纂がほぼ終わって原稿を見せてもらうと、そこに組み込まれた写真の扱い方に地元の、つまりこれまでフィールドワークの対象であった人々の表明した民俗のとらえかたが認められる。ここに近年の民俗誌をめぐる問題を考察する糸口がみいだされる。これらは調査に付随して得られた新しい展開である。 3 本研究のめざす映像記録の分析には現地側の資料とともに、研究者側の映像記録もかなりの本数が必要である。このため今年度収集された資料では未だ不十分であり、目的を達するためにひとつには当該村落以外で地元の人々が撮影しているものの所在調査が今後必要と思われた。また、研究者側のあるいは外部の者の視点を検討する素材を増やすには、映像作家の作品の民俗学の立場からの検討も有効であろう。それらの収集には別の予算措置で若干進めているところである。
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