初年度として、(1)長崎県下五島福江市の上崎山地区における農業構造改善事業による農村開発の80年以降の推移に対する現地調査、(2)長崎県下の類似した状況における新作目の導入による開発事例の広域的な資料収集、(3)千葉県佐原市における地域開発に関する商業の基礎的調査、を実施して、得られた資料の整理と分析をおこない、また(4)佐原の旧市街の町並みの基礎資料と映像資料および商業振興関係の基礎調査資料の作成と整理をおこなった。 (1)の現地調査では、崎山地区で70年代に推進された養蚕とタバコと畜産の集約化にともなう利害の対立と開発をめぐる抗争が、タバコ栽培の衰退に伴って鎮静化して解決に向かった経緯、その際に主婦たちの果たした役割、伝統的な村の共同体的な儀礼との関わり等に関する情報が得られた。(2)としては上五島の奈良尾および北松浦郡の鷹島に於ける農業振興と地域開発・活性化に関する事例が注目され、特に後者では観光開発や国際交流とも結びついた開発企画が注目される。(3)の佐原の事例では、商業振興と結びついた商家の町並み保存による活性化のための基礎的資料としての、佐原の醸造業を中心とする商業の変遷と家業のあり方の一般的状況の文献および聞き取り調査をおこない、また中心の小野川べり及び旧香取街道沿いの幾つかの代表的な商家の家業についての聞き取り調査を試み、家業の変遷と継承、町内会組織や商店会組織の活動、および町並み保存に関わる活動等について具体的な事例資料を得ることができた。
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