研究概要 |
日本の都市における、民俗的感覚の問題を議論しようとする本研究では,研究者個人の感覚と異なる地域から調査を始めることにした。そこで,九州の人吉・水俣,東北地方の諸都市,関東の川崎などをあげて,近世・近代を通じた,河原のマチ場のあり方を,民俗誌的に記述する試みをするなかで,とりあえず,第一年度は,東北の城下町の河原に展開するマチ場についての成果を得ることができた。その他については,調査の手をのばしたものの,継続中である。 東北の城下町を巡ってみてわかったことは,都市といえる複合機能を持ち,全国流通を意識した都市構造を持つのは,仙台だけであり,他はみな領国・藩経済の中心の町にすぎない。従って,城下の端の河原の市のマチの形成については,仙台の坂の町,麓町(北仙台駅)と河原町から長町(長町駅)のみである。 したがって,近世の身分制度が,河原の都市境界において機能し,差別的伝承が残り,それが近代都市の端町として卸市場,在郷機能を有するように展開するのは,仙台だけであった。差別伝承としては,非人に関する差別的な言説や障害者に関する「仙台バカ四郎」の伝承など,みすごすことのできない,近世伝統を背景にした近代都市空間が演出されている。 したがって,そうした差別的な伝承が都市と結びついて展開しているのは,仙台のみであると言い切ることができる。
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