1.前年度に引き続き、大丘戸籍のデータ・ベース化を行ない、その作業を終了した。対象地域は慶尚道大丘府下の祖岩坊一里・二里・甘泉里、月脊坊月脊里・上仁里・蔡亭里・遠徳里の7集落である。 2.これらについて、各氏族毎に系譜の復元作業を行ない、系図を作成した。 3.それに基づき、各時期のそれぞれの戸について、前後の時期との系譜の連続関係を検討し、村落構成戸の入れ替わりの状況を分析した。対象7集落内での継続居住に関する分析の結果は次の通りである。 a.ある時期に存在した戸の子孫が、次の時期にも引き続き居住する比率 b.ある時期に存在した戸のうち、その祖先が前の時期にも居住していた比率 分析結果a.は、地域社会を構成する戸が、父子継続を通して定着に成功する確立が非常に低いことを、また分析結果b.は、定着に成功した戸は分家などにより幾分戸数を増やすが、それでも各時期の地域社会構成戸の半数以上は、近年に来住したものであることを、それぞれ示している。これらは17世紀末〜19世紀中期の農村において、人口の地理的流動性がきわめて高かったことを意味している。
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