本研究では、日本占領期のフィリピンにおいて、フィリピンのキリスト教会が日本軍の占領政策により、どのような変容をとげたかを、歴史人類学的な手法で明らかにしようとした。 具体的には、比島派遣軍(第14軍)とともに、開戦直後の1941年12月にフィリピンに派遣された比島宗教班(カトリック司祭、神学生、信者、プロテスタント牧師、神学生など20数名で構成された)関係者の消息を調べ、長時間にわたるインタビュー調査を行い、口述史料を蓄積することに努めた。研究期間中に東京とその近県はもとより、京都、大阪、神戸、長崎、札幌等でインタビュー調査を行った。これらのインタビュー対象者には、日本占領下のフィリピンで、敵性宣教師として拘束されていた、アメリカ人修道女なども含まれている。 また、関係者を通じて、当時の軍関係の公文書、日本のキリスト教会側の公式、非公式の文書などを発掘することができた。これらの史料は、現在のところ、まだ整理中であるが、体系的にまとめ、インデクスおよび解説を加えた上で、次のように資料集として復刻出版する運びとなった。 小野豊明・寺田勇文(編)『比島宗教班関係資料集』(全2巻)龍渓書舎、1994年中に刊行の予定。 インタビューの記録などについても別途公表する予定である。また、これらの史料をもとにした研究成果は、英文により第13回アジア歴史学者会議(1994年9月に上智大学にて開催)の、第二次世界大戦と東南アジアの部会で発表する。
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