本研究では、沖縄の民俗文化の中で中国文化の影響を受けている風水思想及び門中組織に焦点を絞って調査を実施した。 風水思想については、村落レベルの実地調査と風水を看る風水師を対象とした調査に分けて行った。前者は、名護市屋我地島の我部を平成6年度に、同島屋我を平成7年度に調査した。屋我では、旧集落発祥地からの集落移動があった。その結果、現在では集落の内部が3地区に分かれている。その中のムラウチは背後の丘に御嶽があり、周囲を尾根で囲まれ、海に向かって南面している。まさに風水モデルに合致する環境で、夏涼しく冬暖かい。この地域は現在になっても家屋が増加し、繁栄を続けている。 風水思想が沖縄に伝来したのは、近世に琉球王府の留学生が福建の福州等で風水を学び、帰国後村落風水を見立てたことから一般にも流布したといわれている。風水を看る、いわゆる風水師が現在も活動しているかどうかについては、従来未調査であったので、今年度の調査項目として取り上げた。昨年度は、名護市周辺において、仏教僧が風水も看ていることを調査した。今年度は、那覇市で3名の風水師を確認し、内2名からは先代から継承している風水資料を収集することができた。 第二の課題である門中組織については、名護市屋我地島我部における門中組織の悉皆調査を行った。我部は、近世から在住するいわゆる百姓門中と首里・那覇の士族が明治以降来住した屋取りの士族門中が共存する。士族門中の場合は、中国における宗族のように厳格な父系出自の原則を比較的早い時期から導入して、他系の養子や婿養子を忌避したり、あるいはそのような先祖をもつ場合、祭祀すべき先祖を変更するいわゆるシジタダシを行う。それに対して、百姓門中の場合は、シジタダシなどの導入が時期的に遅く行われていることが判明した。
|