政治的にも、社会的にも中世社会を規定した中世寺社勢力(天台・真言・南都六宗)が中世後期、中世社会体制の解体とともに、どのように変容し、衰退していくのかを検討する。本研究では、中世寺社勢力を支えた地域の拠点寺院で、末寺・末社となった地域有力寺社や、村人によって運営された村堂や鎮守社など、中央寺社よりも在地寺社に焦点をあてながら、在地とのかかわりのなかで寺社勢力の変化を追うことをねらいとした。 そこで、本年度は三年計画の一年目として史料収集に力点を置きながら以下の活動をおこなった。(1)自治体史などの既刊史料集から史料を収集した。とくに河内国・和泉国・紀伊国・大和国の地域寺院に関する史料の収集につとめ、その史料の検討をおこなった。 (2)京都・奈良の史料所蔵機関に出張し、史料の収集につとめ、その史料の検討をおこなった。 (3)研究会(日本宗教史懇話会サマーセミナーなど)に出席して、このテーマについて報告・討議をおこなった。 (4)現段階までの研究成果及び今後の見通しについて発表した。 史料を分析する過程で中世後期の土豪・百姓勢力に支えられた地域寺院(根来寺など)をいかに評価すべきかが課題となった。そこで同じ和泉山系にある観心寺(東寺末寺)・金剛寺(仁和寺末寺)を中心に分析し、そこでの下僧(禅衆・行人など)の山伏化を巡る寺家(学衆)と下僧との抜き差しならぬ対立に着目し、この下僧の山伏化現象を百姓勢力による独自の宗教行事の創設として理解し、従来の中世寺社勢力の本末支配秩序の解体傾向現象として位置づけた。
|