1.後写一切経関連帳簿の整理・復原 作業工程の流れに従って進めてきた帳簿の整理・復原作業の成果を模式図に示す作業をほぼ完成させた。 2.書写過程の実態分析 前記作業によって得られた諸帳簿をもとに、後写一切経の書写から成巻に至るまでの実態分析を行った。その際、各経典毎の作業過程を表に整理し、全体の進捗状況を一覧できるようにした。 3.他の写経事業との関係 前記作業を行いながら、同時期に進行していた他の写経事業との関係を考察した。特に、ほぼ同時進行していた先写一切経との関係を追求し、先写一切経が聖武天皇自身のために、また後写一切経が聖武天皇の指示によって皇太子・阿倍内親王のために行われた一切経事業である蓋然性の高いことを確認した。 4.後写一切経の経典目録の作成 基本帳簿である「充本帳」に記される「雑第某帙」の内容の復原を行った。この作業は天平期における一組の一切経の具体的姿を明らかにするもので、別途報告書を製作中である。 5.五月一日経目録の発見 前記作業には正倉院文書中の経典目録を用いたが、年月日不明のものが多く、その作成時期・目的を考察する過程で、これまで未発見とされてきた五月一日経の目録を、大乗経の分だけではあるが発見することができた。 そのほか、善光朱印経の原本調査を行い、未紹介の2巻を新たに確認した。
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