1.サハリン国立文書館所蔵日本側関係資料について (1)樺太庁作成資料のうち「真岡地区」を取りあげ、とくに終戦以降のソ連軍進攻による日本人社会の被災状態や混乱状態に関する公式的な記録を戦後、初めて把握した. 2.サハリン国立文書館所蔵ソ連側関係資料について (1)ソ連軍進駐後、軍政下に樺太庁が存続し、日本人社会が行政上明瞭に在在したが、1945年12月30日付の命令書によって樺太庁は廃止させられていたことがわかった.これを機に日本社会の行政的機構が壊滅した。それ以後はサハリン州制が施行され、サハリン民政局が行政を担当し、日本社会は大きく変容させられることになる. (2)ソ連民政下において、日本人民住区での地方行政の実態をかなり明らかにすることができた. 3.一時帰国者の聞き取りなどについて (1)ソ連軍進駐後の日本人社会は、ソ連軍政と秘密警察組織の監視下のもとで極度の圧政下におかれ、日本人社会の形骸化は急速に進展する. (2)会社、個人企業、商店等は、ソ連民政の下に国営に移管されたがそれぞれの経営主の抵抗や対処の実態が明らかとなった. (3)多くの理由によって止むなく戦後も残留した日本人は、まだ現地に居住し、劣悪な条件下のもとで生活を続けている多くの事例が明らかとなった。
|