本年度は3ケ年間の研究の最終年度として、その最大の成果とすべき候外廬『中国古代社会史論』(北京・人民出版社刊)の翻訳出版のため、ほとんど費やした。本書は、前年度の報告でも述べたごとく、中国古代(殷・周)における共同体と国家の成立とのかかわりを、アジア的生産様式の理論をふまえながら展開した名著であり、中国の学界でも高い評価が与えられているが、その理論や広範に引用された史料読解の難しさから、外国語には翻訳されることなく今日に至っている。本年度ではほぼ完成した訳文を最終的に点検し、引用史料の出典の不明な個所について再度調査して補充し、巻末に附すべき「解説」を執筆した。現在のところ二校まで終っており、本年5月には出版の予定である(名著刊行会より)。 これとあわせて、候外廬の中国古代史研究に関して2つの論文を執筆した。11に示したものであるが、1つは前掲書の学説史的意義について論じたもの、もう1つはその書に示されている中国古代の都市国家についての理論を検討し、私自身の考え方を提示したものである。 さらに、候外廬の都市国家論と、日本の宮崎市定・貝塚茂樹両氏のそれとを比較し、そのとらえ方の相違がどこかにあるかを検討する論文を現在執筆中である。
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