本年度は、三年計画の初年度に当たるため、課題関連史料の系統的蒐集と整理、及びデータベース化に作業の重点を置いた。なお、体調を崩し、予定していた国内外の史料まで、調査の手を広げることが困難であったため、主として手元にある史料からの関連史料の系統的抽出と整理を行なった。 即ち、課題とする清代の東西間の物資・商品の動きは、時の政治的・軍事的動向と密接な関係があるが、国家的必要から推進された物資・商品の確保・集積・移動は、やがて流通経路の確保、需要の創出、民間ペースの商品流通の活発化をもたらし、さらには地域的特性を生かした生産面での発展という地域的経済構造の変化をももたらした。現在、対ジュンガル部作戦に見られる清朝政府の西方政策の展開にともなう人・物の動きに焦点をしぼり、『宮中档康煕・擁正・乾隆朝奏摺』からは、西方政策と東西間の商品流通関係史料を中心とし、さらにそれを支えた全中国的な商品流通に関係する史料の抽出を行い、(1)、必要部分をコピーにとるとともに(2)、抽出した関係奏摺の題目及びキーワードのパソコン入力を行なってきた(3)。現在の進行状況は、(1)についてはほぼ終了しているが、(2)及び(3)については、現在のところ乾隆代の半ばまで終了した段階にある。94年度の前半まではかかる見込みである。なお、清朝政府の政治的・軍事的動きについては、『宮中档』に加えて、『実録』・『方略』・『上論档』等からも史料を蒐集し、現在分析中である。なお、課題の背景となる全中国的商品流通については、11項所載の論考一点を発表し、総合研究報告書(研究代表者神田信夫氏)に清代档案史料紹介一点を発表したほか、筆者のこれまでの研究を中心とした著書『清代常関制度研究』を作成中である。
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