本年度は3年計画の2年目に当たり、次の二分野が作業の中心となった。一、史料の蒐集と整理。二、蒐集した史料の分析と研究報告作成の準備。先ず第一点として、昨年に続いて「宮中档」・「乾隆朝上論档」等の档案類、及び関係地方志等からの関係史料の蒐集と、蒐集史料の表題・概要のパソコン入力、及びコピー作成の作業を継続した。また本年度入手した第一歴史档案館所蔵の「朱批奏摺財政類」の『関税』部門のマイクロフィルムより、リーダープリンターによるプリントを行なっており、間もなく乾隆末年までの史料プリントを終了する予定である。ついで第二点としては、清代における商品流通の実態を、それを管理する国家機関である内国税関を軸として考察した「清代常関制度の研究」を作成し、学位論文として東北大学に提出して学位を授与された。この研究は、課題である西方への物資・商品の流通の背景となった全中国的商品流通の状況を、主に大運河を用いた南北間の流通状況を中心に考察したものである。現在著書として出版するための手直しを行っている。また、昨年夏に第一歴史档案館所蔵の清代黄冊を調査し、数点の税関の「銭糧冊」のマイクロフィルムを入手した。現在分析中であり、近く論文として発表する予定である。直接課題に関する研究としては、昨年より手懸けていた「西方作戦の展開にともなうフホホト経済構造の変化」があるが、その後に蒐集した史料によって補筆を行なっている。また、同様に西方軍需によって経済構造が大きく変化した事例を見いだし、併せて検討中である。また、長期間にわたる膨大な軍需費用投入の経済効果については、いわゆる黄冊を通して清朝国家の財政構造を検討する必要があり、国内で入手できる史料には限界があるため、中国における史料調査が効果的と考えている。
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