11・12世紀ヨーロッパにおいて活躍したノルマン人についての総合的理解を目指しながら、アングロ=ノルマン期に活躍した具体的人物の伝記や具体的事件の記述史料を比較分析することで、当該期の歴史家たちの立場の異同を明らかにし、歴史家の立場や記述史料内容の異同が当時の現実をどのように反映しているのかを検討した。 購入した『ドゥームズデイ=ブック』や他の史料・研究書、そして史料収集旅行で集めた研究論文を利用しながら、上記課題での研究を進めたが、史料・文献の入手、利用開始時期等の事情もあって、現在までに記述史料内容の分析が終了したとはいえない。今後もひきつづき史料内容の比較検討を行っていく予定である。 しかし、本年度中において、文献を中心としたアングロ=ノルマン期の歴史家(『アングロ=サクソン年代記』作者、エドマー、ジョン=オヴ=ソールズベリー、ウィリアム=オヴ=マームズベリー、オルデリック=ヴィターリス、ジョン=オヴ=ウスター、シメオン=オヴ=ダラム、ヘンリー=オヴ=ハンティンドンたち)についての研究を進め、12世紀前半を中心とした各歴史家の歴史叙述の内容、かれらの執筆動機、時代的特徴などについて概観することができた。こうした、主として研究文献から得られた知見について、みずから史料に当たりながら確認し、通説を批判的に検討していくことが、今後の課題である。 なお、これまでの研究から得られた知見は、当初の実施計画のごとく、学術誌における論文「アングロ=ノルマン期の歴史家立ち」として発表する(広島史学研究会『史学研究』204号掲載予定)。
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