研究概要 |
当該年度の研究活動は、学内での勉強会と学外の研究者を招いた研究会を二つの核として進められた。まず月1度、魚住、高澤を中心に助手、大学院生、学生らと共に勉強会を開き、内外の基本的文献(喜安朗氏の諸著作、Maurice Agulhon,“Working class and sociability in France before 1848"など)の講読を行いつつ、ソシアビリテ(社会的紐帯)概念の理解を共有することを目指した。これに伴い、主として海外の文献の収集、整理も進めていった。 その上で、11月以降は2度にわたり、二宮宏之氏(フランス近世史・東京外国語大学)、佐藤清隆氏(イギリス近世史・相模女子大学)、徳橋曜氏(イタリア中世史・富山大学)らと研究会を持った。ソシアビリテ論の成り立ちと現在について、また個別のフィールドにおける研究状況と具体的成果について各人から報告をおこなった。魚住は、ドイツの学界の研究状況を紹介し、高澤は16世紀、17世紀の民兵を取り上げ近世パリ社会のソシアビリテを考察した。東洋史、日本史の研究者の参加をあおいだ結果、個別領域にとどまらない広い視野から活発な意見交換を行い、方法概念としてのソシアビリテの有効性と問題性についても議論を深めることができたのは大きな成果であった。当該年度内にこれらの成果をまとめて発表するには至らなかったが、平成6年度には論文として公表される予定である。
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