日本列島への外来文化の流入路の一つ、南方ルートは南北1000kmをこえる広範な地域に多くの島々が散在している。本研究では、当該地域に形成された文化の諸様相がどのような形で受容され変容していったのかを、南九州からの視点でさまざまな角度からの調査研究を試みた。本年度は南西諸島地域の中で、八重山諸島(与那国島・石垣島・竹富島)と沖縄本島を、さらに近年の調査で、南海産の貝製品(ゴホウラ・イモガイ)を出土した北海道伊達市有珠10遺跡を調査した。南西諸島においては、遺跡出土の【.encircled1.】中国系文物、【.encircled2.】九州系文物について検討した。【.encircled1.】の中国系文物については、明刀銭、五銖銭、開元通宝などの中国古銭に焦点をしぼった。明刀銭については九州系の遺物が共伴しているところから、朝鮮半島・九州を経由して沖縄へもたらされたものとする従来の説を追認した。五銖銭については沖縄本島出土のものは九州系の弥生式土器などをともなっており、九州よりもたらされたものと考えられるが、久米島出土のものについては東シナ海側の海岸地域に多く出土し、九州系の文物の出土が希薄なところから中国大陸より直接もたらされたものとした。開元通宝については従来鑑真和上の渡来関連するものとされていたが、石垣島、西表島、沖縄本島の勝連半島などにも出土しており、これらの地域に鑑真和上が立ち寄ったことは考え難いことから、当時中国と当該地域の間に交易圏が形成されていたのではないかと考えられる。【.encircled2.】の九州系文物については平安時代末の滑石製品が、また徳之島産の南島須恵器も八重山諸島にもたらされていることを確認した。北海道有珠遺跡出土の南海産貝製品のなかで、イモガイ製品は長崎県佐世保市宮ノ木遺跡出土のものと酷似しており、南島から直接もたらされたのではなく、西北九州経由でもたらされたものであろう。以上の諸点が本年度の研究成果である。研究成果については本研究終了後まとめて発表したい。
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